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『名作はいつもアイマイ』 西川美和 編著
『名作はいつもアイマイ』 〜溺レル読書案内〜 西川 美和 編著 / 講談社

恥ずかしながら、名作と言われる文芸作品をほとんど読むこともせずにここまで齢を重ねてきてしまいました。
この本に納められてる作品は、聞いたことあるけれど・・・ごにょごにょ・・・

若い男性むけの雑誌で、映画監督である西川美和氏が国語の授業と称して、
いわゆる名作を紹介し、「なにか」のきっかけになればという思いで始まった連載企画。

はやりの「あらすじガイド本」かといわれると実はそうではなく、西川氏はその作品を原文のまま一部、あるいは全文紹介し、その作家にまつわるあれやこれや、作品のレビューなど、ご自分の本音も交えながら、文芸作品初心者の私のような未熟な読者にもとっつきやすいように紹介してくれてました。

たとえば、芥川龍之介の「トロッコ」なんかは中学の頃授業でやったのだけれども、あの頃の私にはなんとも面白くない作品で、子どもがトロッコに乗せてもらって遠いところに来たけれど、一人で帰る羽目になった。ただそれだけの作品と言う印象だった。
少年がトロッコに憧れる気持ち、高揚が焦燥や不安に変わる心の揺れ、無事帰還したときの安堵と涙の意味、そして同時に失ったもの。

短い作品の中にこんなに深い感情の起伏があったのかと、目からウロコ。

あの時の国語教師を恨むわけではないけれど、国語の授業って「正解」がないっていうからこそ、いろんな角度からヒントを与えて欲しかったと今は思う。

全部で十篇の作品が紹介されてます。


・色川武大  「たすけておくれ」
・志賀直哉  「痴情」
・向田邦子  「隣りの犬」
・井上ひさし 「薮原検校」
・三島由紀夫 「人に尻尾をつかませるべし」
・芥川龍之介 「トロッコ」
・野坂昭如  「エロ事師たち」
・遠藤周作  「海と毒薬」
・太宰治   「メリイクリスマス」
・林芙美子  「めし」

書き下ろしエッセイ 西川美和 「もう夢は見ないけれど」



向田氏の項では、西川氏の彼女への想いの強さが、まっすぐに伝わってきました。
そして、ダイレクトにその思いを受け止めた私まで、向田氏の早逝が惜しくて仕方ないような気持ちになったり。
野坂氏の項では、ちょいちょいメディアをにぎわせた彼の言動を思い出し、生々しい描写に「ほたるの墓/アメリカひじき」のなかにもあった「生きるしぶとさ」を浮かべたり。

現代の作家が今を描いた作品は、同じ時代を生きるものとして、空気感や社会情勢やそんなことは考えなくてもそれなりにリアルに肌で感じることができるので、それほど「解説」を必要としないのだけれど、やっぱりちょっと前の作品は、不勉強な初心者はこういった解説やレビューがついた方が俄然面白く読めました。


巻末の書き下ろしエッセイ・・・。

「もう夢は見ないけれど」

このエッセイもかなり面白かったーー(笑)
最後にこのエッセイで締めてくれてあったからこそ、この本を読んでよかったと思えてしまった。
いいんだかわるいんだかは別として。

読者は往々にして作家と作品を混同し、同一視してしまうけれど、
西川氏は、作家は平気な顔をして嘘をつくという・・・。




以下たたみます↓↓↓







「作品がデカダンだろうとハードボイルドでだろうと、作家がそんなものを地で行く必要などあるだろうか?彼らはただぬくぬく、床暖房の効いた部屋で、甲斐甲斐しい老妻に夜食を運ばせつつ、紙の中に血潮をぶちまければよい。ほっこりあたたかなうさぎたちのお話を綴る作家だって、札びらを掴ませたホステス達をはべらせ不夜城を練り歩いてよい。そんなの嫌だ、知りたくなかった、詐欺だ、と、読者は勝手に作品性と作家そのものの同一性を夢想するものだが、そんなものはお笑い種だ。母殺しをしなくとも、母殺しを書く。これが作家だ」

〜巻末エッセイの本文より〜


わかっちゃいるけど、未熟な私はついつい、作家と作品を混同視してしまう。
でも、そう思わせることこそ、「プロの作家」の仕事なのだなとあらためて嘆息。



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[2010/07/14 12:18] | book | トラックバック(0) | コメント(0) |
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