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『1950年のバックトス』
『1950年のバックトス』 北村 薫/新潮社

短編集です。

個人的に、北村さんの作品は長編や中編に触れることが多かったので、
短編集は『水に眠る』を読んで以来かな?

20編超の作品は95年から07年にかけて発表された短編を集めたもので、
各作品、切り口も趣も味わいも違う作品群でした。

何の前知識も持たないで読んだのでしょっぱなは、ジャパニーズホラー的作品にぞくりとさせられましたが、
すぐに北村さんらしい作品群の数々に、心の真ん中にそぉっと熾をおいたように、じんわりあたたかい気持ちになりました。


表題作の『1950年のバックトス』

これはもうとっても素敵なお話でした。

戦後、ほんの短期間だったけれども、日本にも「女子のプロ野球リーグ」があった。
そのとき一緒のチームにいた二人が、半世紀の時を越え、お互いの孫の少年野球を通じて偶然再会する。

言葉にしてしまえば、たったの二行ですんでしまう話。


憧れの先輩にたった1度だけバックトスをすることができた。
その永遠の一瞬。
誰のものでもない自分の青春だったと断言できる、あの輝かしい一瞬。
どこにでもいるような普通のおばあちゃんにも、そんなキラキラしたときがあった。

その一瞬を描くためだけに、書かれたようなお話に感じました。

残念ながらその後、女子プロ野球はなくなってしまい、その存在すら忘れ去られた現在。
正直私も、この作品を読むまで、日本に女子野球があったことなんて知りませんでした。

でも、いつの時代だって、歴史に名前が残らなくったって、そこで生きて輝いていた人達がいて、
そういう人たちがいて、そして今に繋がっていることを感じさせてくれました。



そして、最後の最後に納められた『ほたてステーキと鰻』

ここに『ひとがた流し』の牧子親子のその後が描かれていました。
まさか、こんなところで彼女たちに再会するとは思っていませんでした。

友を失った彼女が痛みと向き合いながら、時間と周囲の人たちと、何気ない日常に、
ちょっとずつ心をたてなおしていく様子が、どうにも温かで、涙が出そうに。


―― 夜と昼があり、曇りと晴れがある。そうやって一日一日を過ごしていくのだ。
―― しかし、何かを失えば、また何かを得ることもあるのだろう。


私もそろそろそういうことが増えてくる年齢になってきました。

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[2010/06/07 15:41] | book | トラックバック(0) | コメント(0) |
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